はじめに
勤怠チェックとは、社員の日々の勤怠について不備がないかを確認する業務のことです。会社によっては月末に締め、15日締め、毎日締めなど締め日を設け勤怠を確定しています。締め日が違う理由としては、ひとつに給与支給日の影響があります。残業時間を集計し、割増賃金を支給するため勤怠の確定をしないと次の工程に進めません。そのためどこかのタイミングで確定させないと支給後に再計算をしていては非効率となってしまいます。通常、どんな勤怠システムでも、勤怠確定後(最終承認後)は修正できない仕様(勤怠ロックという言い方も)になっています。これは確定後の改ざんを防ぐ目的や他の集計計算が走ったあとに再計算すると数値がおかしくなる可能性もありそうなっています。そのため、ひとたび確定してしまうと解除するには少し面倒なことになるため、確定前のチェックは非常に重要になってきます。
勤怠チェックについては労働基準法やその他の法令上のルールがいくつか存在します。各社様々な制度を導入しているため一概にこれですというのが表現はできませんが、大前提として各社の就業規則に記載されている通りに処理することがこの業務の唯一のルールです。そのため業務をはじめて経験する際は就業規則の読み込みが必要になります。
9割の勤怠は正常、残り1割のイレギュラーを見つける仕事
数多くの勤怠のチェックをしてきましたが、どの会社もほとんとこの通りです。
基本的にフレックスタイム制度であれば、コアタイム欠勤(コアタイムがある場合)や休憩時間取得の確認など、通常の所定就業時間制であれば始業終業時間通りかの確認、アルバイトや時間短縮勤務者であれば始業終業の時間の確認など至ってシンプルです。
勤怠チェックはデータだけの確認なので勤務内容・態度までの確認は通常行いません。故に一定パターンに基づいて確認していくいわば単純作業です。
そのため新任できた人や派遣社員の方に依頼しがちな業務になってます。
ではどんなイレギュラーがあるのでしょうか。
■締め切り日までに提出してこない本人へ早く出すようにフォロー
イレギュラーというのかはさておき、ほとんどの人が提出しているのに出さない=イレギュラーな人への対応です。そんな昔の勤怠覚えているのかくらい放置する人もいますし、単純に忘れていたという人もいます。本人へ直接フォローすることもありますが、大半は上司への依頼で解決します。
このイレギュラーで一番イライラするのが遅れて出してきたのに、時刻の申請が間違っていたり、休憩がしっかり取れていないなど、差し戻しや追加での指導が必要な場合です。いい加減にしてほしいところですがルーズな人はどこにでもいます。そして決まって同じ人です。
■承認ボタンを押さない上司へ承認していただくようにフォロー
提出しない社員もいれば、なかなか承認しない上司もいます。通常の勤怠システムであれば本人申請後は直属の上司へ承認依頼が飛びます。管理者がその社員の勤怠をしっかり見ておく必要があるので、勤怠ワークフローは直接人事総務へ飛ぶ仕様にはなっていないはずです。しかし、この仕様があるため上司が承認しないので次承認フローに回ってこないということがよくあります。そうです。ストッパーです。このストッパーも毎回ほぼ同じ人が登場します。
そして何より厄介なのはこの手の上司は部下の勤怠確認は一切しません。全件一括承認ボタンを押しておしまいです。間違ったままで上がってくることが多いため→差し戻し→ストッパーでとまる→フォローするの繰り返しです。承認フロー回す意味あるのかと思ってしまうところですが堪えてください。お忙しい方なのかなと母なる心でみてあげてください。(この辺りが総務は母親代わりという割れる所以なのか?)
■休暇区分の選択ミス
就業規則には必ず載っていますが、休暇の種類はたくさんあります。そのため、本人が申請する際、選び間違えることがあります。業務に携わっていない方は年次有給休暇や看護休暇、介護休暇、代休、振替休日、慶弔休暇など、たくさんある休暇をあまり理解されていないことが多いです。もちろんわからないことは聞くをモットーにされている方は熟知されていますが適当に申請を上げてくる方もいます。滅多にないパターンなのでチェック担当者がミスに気づかないケースもあります。一覧に出力して、イレギュラーを抽出することで大抵は発見できますが、見逃さないように注意しましょう。
■アルバイト勤務の時間確認
基本は開始と終了の時間から休憩時間を引き勤務時間を割り出します。法定休憩はシステム側でアラートがでますが、よくあるのが打刻を忘れて計算処理が回らずエラーが表示されないようなケースです。また、退勤時に出勤打刻をしてしまい気づいてないケースや放置している場合などがあります。修正や、他のログから判断して対応することがありますがこれは数字をしっかりみていないとそのままスルーされます。スルーしてしまうと時給の賃金計算が正しく計算されないということにも繋がります。
■時間短縮者の勤務確認
時短勤務者は短縮した始業終業時間をそれぞれもっています。そのため、その時間通りに勤務をしているか、不足している時間がないかのチェックが必要になります。賃金の支給方法によって影響が変わってきます。たとえば基本給減額型時間短縮制度であれば短縮所定労働時間の過不足管理が必要ですし、不足時間控除方式であれば時短時間と遅刻早退時間の2つを別々で管理する必要があります(賞与などの減額計算で時短時間を除くために別々管理が必要になります)。
■他にもチェック項目がたくさんあります
システムで判定する項目
かつては人がチェックしていたことも今ではシステムで判定することが可能になっています。例えばどんなものがあるかいくつか例示します。
- 36協定(日次・月次・年次)の超過申請から申請時間と限度時間までの残時間管理など
- 36協定時間超過者の回数管理
- 年次有給休暇や加算型休暇(特別休暇など)、減数型休暇(消滅有給、看護や介護)の残日数管理など(年次有給休暇5日取得状況など)
- 休憩時間の取得状況の管理
- 客観的把握時間と申請時間の差異管理
- インターバル時間の表示やアラート
- その他
システム判定する内容は日々進化しています。今後生成AIによるチェックの自動化が進むとさらに機械が実施する範囲が増えるでしょう。
必要な心構え
まず、勤怠管理に関する基礎知識が必要です。それは社員や上司からの質問があるからです。
(例えば、時差勤務で明け休みをとったけれどどんな申請をすればよいか、法定休日に振替勤務したいが振替休日はいつ取得すればよいかなど)
といっても自社に関係のない範囲まで詳しく知っておく必要はありません。目安は勤怠管理系のHow To 本1冊(薄いのでOK)と就業規則を印刷して持ち歩きましょう。社会保険労務士と契約しているのであれば先生に聞くことやあとはGoogle検索やChat GPTに聞けば十分です。
次にデータを出力して色々加工する機会があります。そのため最低限のExcelの使い方は知っていたほうがよいでしょう。非常に参考になる動画もたくさんあるYouTubeやTikTokなどを使い、基礎や効率化などみておいてもよいかもです。
最後は、毎月業務を携わっているとずっと締切のある業務になります。心にゆとりを持っておきましょう。心が擦れると持たなくなります。