はじめに

会社における採用業務は人員の確保や法律やルール等による定員確保など「人」を扱う仕事では非常に重要になります。また、担当する人のスキルとして、会社の製品の知識や求人する部署の仕事内容、社内の制度、そして社外・社内にかかわらず人とのコミュニケーションスキルと、非常に卓越した能力と広い知識が求められます。

しかし、想像してみてください。そんなスキルを持っている人は限られます。

社内の事情に詳しい人となると一から育成や教育する必要があり、素早くアサインできる外部人材を活用するのにもハードルが高いです。そのため、採用担当者がひとたび退職してしまうと次の人がすぐにいないというのが世の中の多くの会社の実情ではないでしょうか。

ここでは、そんな状況にある採用担当者不足という問題について、未経験の人が業務について知る機会としてどのような仕事なのかイメージできるようにまとめています。

採用種類・区分について

採用業務といっても実は様々な範囲が存在します。それぞれについて見ていきましょう。

新卒採用(大学(院)・高専・短大・専門学校)

新卒採用業務はみなさんも経験がありイメージし易いかと思います。日本では3月に学校を卒業し、4月から新しい生活をスタートするのがスタンダードです。そのため、学校を卒業するときに合わせて雇用を開始できるように、卒業する1年前くらいに採用活動を始め、学生のうちに「内定」(労働契約)を結びます。なお、高校卒業者の採用については、ハローワーク主導で求人票管理や学校推薦などがあり、制限なく自由に採用するということは難しいです。また専門学校も求人票が届く企業を学生に紹介したり、業界からの要望に応じて学生に求人を紹介する場合もあり、幅広く採用するには少しだけハードルがあります。

担当する人

採用する人材の年齢層は20代前後です。そのため、話しやすさ親しみやすさから窓口となるのは、同じく新卒で入社した入社3年目くらいまでの担当者が多いです。もちろん、課長やチームリーダーなどが対応することも多いですが社会人経験のない学生を採用する上では「若さ」があった方がよいです。

使用するツール
  • 大手求人サイト(リクナビ・マイナビ、新卒を専門とする)など・・・圧倒的に利用者が多いです。後述しますがこのはじめの集客が重要になります。また、学生へのメール送信や進捗管理、面接結果の登録、面接官へのスケジュール共有など、オプション機能もついているサービスがあります。Excel管理もよいですが、お金があって、スマートにまとめるのであれば利用価値があります。
  • 採用管理システム(メール連絡や自社の採用サイト機能などがついているもの)・・・採用の進捗管理はもちろん適性検査や面接評価の管理などを目的に導入します。求人サイトの情報と自動連携機能があるものもあります。マイページを作る機能や自社独自のエントリーシート作成に対応していたりするものもあり、従来紙で対応していたものがこちらに移行していっています。
  • 社内のスケジュール共有ができるポータルサイトなど・・・一般的には会社で社員が利用しているスケジュール共有機能のあるシステムです。
  • オンライン会議用のシステム(Zoom、Teamsなど)・・・対面面接が減ってきています。会議の予約や面接官へのURL共有など操作に慣れておく必要があります。特に面接官の空き予定を見ながら会議予約をし、URLを間違えずに登録する作業はPCに不慣れだとなかなか大変です。と、そんな不便さを解消するツールがあります。他社のサービス紹介になってしまうのでここでは勝手に掲載しませんが気になる方は「日程調整」「採用面接共有」など検索してみてください。
  • パワーポイントなどのプレゼンツールやノベルティ・案内冊子など・・・会社説明会には必須です。会場によってはプロジェクターや会社を紹介するポスター、タペストリなど準備も必要になります。そして、無料で配布するクリアファイルやボールペンなどのノベルティを準備する会社が多いです。デザイン料など初回に費用が多めに発生するものが多いため、毎年発注するものについては業者をある程度固定しておいたほうがよいです。またロット注文なのでロット数の対応幅についても考慮しておく必要があります。(多すぎて余らすことがないように)
  • 社内の経費精算システム・・・基本的に採用活動にはお金が発生します。担当者や学生の交通費の精算、インターンシップ開催時の飲食物の購入費用、会場費用の支払などさまざまです。そのため、社内での精算方法や経費承認・稟議の仕組みなどをしっかり理解しておく必要があります。面接をすること、人を採用することだけが、採用担当の仕事だと思っている場合、考えを改めましょう。自社の精算方法を知らずして採用業務は成り立ちません。
  • 宅配便の依頼や伝票など・・・ツール?かどうかはわかりませんが、合同企業説明会や学校で開催される企業説明会などは荷物の送付が必要です。(社有車があるとか金太郎並の力持ちなら別ですが)荷物の発送や受取は知ってないと仕事ができません。費用の精算方法と一緒に覚えて置く必要があります。
■最初に任される仕事

採用枠(どこに何人配属させるか)については、採用担当がヒアリングして確認するケースがありますが、予算などの制約や組織改編なども関わってくるため担当者レベルで決定することはないはずです。

もちろん、過去数年の配属先の情報や組織の年齢構成、3年以内の退職者数、ミスマッチの発生状況など、経営層へ提供できるようにしておくことは重要です。しかし、人事システム等にアクセスする権限がないと閲覧できない場合もあり、「最初」には任されないでしょう。

それでは他にどんな内容があるのかみてみましょう。

*ケース1(配属先部署ヒアリング)

上司からみてかなり期待値高めな人は、どんな人を探しているか各配属予定先部署の責任者へヒアリングを行う業務が取り掛かりになるかもしれません。が、しかし、最初はきっと同席するだけです。なので、議事録も大切ですが、将来自分ひとりで行うことをイメージして、先輩が部署の責任者に確認する項目を箇条書きにしてしっかりメモしておきましょう。

(ヒアリングする項目について会社によって何を重視しているかで変わってきます)

部署ヒアリング例:

中途採用と違い新卒採用では能力面はあればプラスくらいなので、どちらかというとどんな人が良いのか人物像メイン。ざっくりでOK。

採用したい人の学校のレベル/学部/学科/専攻/学歴(学士・修士・博士?など)の確認は必要。

採用したい人の性別(将来の休職などを想定し、性別の偏りがないようにするため。聞き方で差別的にはならないように注意)

採用した人が最初に担当してもらう予定の業務内容(詳しく聞いておきましょう。自分が知らないことは恥を恐れず突っ込んで聞くこと)

勤務予定の場所(複数拠点で同じ部署がある場合などは確認要)

etc…

*ケース2(説明会での企業説明・プレゼン)

学生時代にプレゼン経験が豊富な場合はそこまで緊張しないかもしれませんが、人前で話すということに慣れて場合は、練習しておく必要があります。この業務はプレゼン資料を作ることとは別です。プレゼン資料について、作ることや更新する作業を任されるのはもっと先でしょう。基本的に説明内容が人によってブレてはいけないので説明する資料は使う人に関わらず共通です。そのため、原稿が用意されている場合や、説明のポイントが記載されたパワーポイントが用意されていることが多いです。そのため、ひたすらに練習をすればそこまで難易度は高くありません。

説明(プレゼン)時の注意点は以下のようなことがあります。

・下ばっかりみて前をみないプレゼン(文章を読んでいるだけに見えて退屈です)=原稿だけでなくアドリブも入れましょう。

・抑揚がないしゃべり方(いわゆる棒読み。やる気ないように見えます)

・あたふた、自信がないさまを見せる(残念ですが、説明内容が全く信用されません。。)

・漢字の読み間違い、製品名や英語の読みが変、知ったかぶり(学生になめらます。案外ベテランでもミスってる場合もあり。事前準備必須)

・時間切れ・余り、早口やゆっくり過ぎるなど(時間配分重要です。練習あるのみですが慣れれば感覚で実施できます)

・最後の学生からの質問時間の回答で嘘をいう(バレます。掲示板に載って共有されます。対策は想定質問を用意しておくこと。詳しくないことはわからないから後日回答もしくは座談会などの交流の場で部署の詳しい人に聞いてもらうように促しましょう。)

*ケース3(採用管理システムを使った応募者管理)

よくニュースで聞くことはないですか?「〇〇会社 応募者全員に内定通知メールを誤送信」「△○会社 別人へ合格通知メールを誤送信」などです。実際、求人媒体サイトの情報をCSVで出力し、自社の採用管理システムへ取り込む際にメールアドレスがずれていたことや個人へ送信する内容の宛先を登録者全員にしていたなど様々あります。不慣れなシステムやPC操作に自信がなく、管理者のチェックが甘い場合などはこの手のミスが発生します。

しかし、採用管理システムはやはり優秀で採用フローの管理などExcelや紙で実施していたころと比べると処理量が格段に違います。早期に慣れてもらうために最初に触れておいてほしいと考える上司もいると思います。なので使いこなせれば採用担当者として未来は明るいでしょう。

(コラム)システムを触る前に知っておくべきこと

  • 採用業務の処理フローを知る(どこから学生情報が届いて、次にどんな案内をするのか、最後内定を出したあとのフォロー体制などの確認も)
  • どんな処理ができるかを知る(メールの作成・テンプレート機能はもちろん、会社説明会の案内・予約機能の確認、出席者の出力方法)
  • 操作方法に困ったら誰に聞くのかを知る(教えてくれた先輩、製品のサポートセンターなどシステムに詳しい人を見つけておきましょう)

*ケース4(社員との交流会・インターンシップ・座談会・内定者懇親会などの運営)

企業説明会など一方的な説明だけの会社もありますが、中には学生からの質問を実際の現場の社員に聞く機会などを設けている会社もあります。

この会の運営は業者に任せるということはありません。そうです、採用担当者が案内から運営まで全てを実施します。

  1. 開催日時、タイムライン・開催場所を決めます。(会場は予約が必要な場合もあるので早めに動きましょう。)
  2. まずは参加者の募集を行います。内定者だけやインターンシップ申込者など決まっている場合はそこまで難しくはないです。
  3. 会社側参加者への出席依頼を行います。
  4. 当日に必要なものを手配します。(飲み物やお菓子、コップやゴミ袋などを準備、交通費精算する場合は申請書・領収書などを準備)
  5. 当日の出欠表、座席表を作成します。(挨拶する人などにはあらかじめ依頼しておかないと怒られます。)
  6. 当日の司会進行を行います。トイレ休憩を挟むタイミングや室温の管理なども担当者の仕事です。
  7. アンケートなど必要なものを回収しましょう。(Webフォームを利用すると集計などが楽です!)
  8. 各種精算、反省会を開催します。(反省会はかなり重要です。次に活かしましょう)

*ケース5(内定者フォロー)

新卒採用業務は学生に内定を出せば終わりというわけにはいきません。

入社半年前には内定者通しの顔合わせや顔写真の撮影、入社までの期間の過ごし方や留年しないように圧をかけるなどの目的で内定式などを準備する企業もあったり、内定者同士が交流できるSNSを開設したりと様々です。そのような内定者をサポートする業務が新卒採用担当にはあります。

当然労働契約では卒業後という始期指定をしているため、業務をさせることはできませんが、学生アルバイトとして雇用することは可能です。学業優先ではありますが学生にとってよりよい社会人生活がスタートできるように努めることが求められます。

内定者フォローはやはり、年齢が近い採用担当者が好まれます。会話の流れに入りやすく、学生も話しかけやすいからです。

*ケース その他

他にも様々な業務がありますが、最初に任される業務としてはそこまでハードルが高いものはないはずです。学生への電話掛けやメールの送信などは担当者自身が緊張してしまうと相手にも緊張が伝わってしまいます。応募者よりは立場が上なお兄さん、お姉さんとしてハキハキと業務をこなすようにしましょう。人とのコミュニケーションが問われる仕事なのでいろんな人を見て楽しく仕事をしましょう!また、まだまだ他にもデータ分析や求人票のp作成、エージェントを利用した採用、学校推薦を活用する等、新卒採用業務は奥が深いです。しかし、原因と結果は比較的はっきりしています。

中途採用(経験者採用)

かつての大企業では当たり前であった日本的経営の一つである終身雇用は、不況や海外での競争力低下などによりどんどん崩れています。離職する人が増えれば、当然、就職活動をする人も増えます。そして、現在では過去の会社で経験した業務スキルを別の会社で活かすということが当たり前になりつつあります。中途採用業務はそのような経験・スキルを持った人を採用することで会社の成長に貢献する素晴らしい業務のひとつです。中途採用業務は新卒採用とはスケジュールも選考フローもガラッと変わります。そして中途採用業務は採用戦略次第で結果が大きく変わってきます。

■担当する人

中途採用業務を担当する人は新卒採用で経験を積んだ人や傾向の分析ができ、何より会社の製品や業務を深く知っている人でないとうまく機能しません。特に社内で採用担当は誰かと社員に聞いたときに「〇〇さん」と名前が出てくるレベルでないと務まりません。そのため、派遣社員や新任として参画した場合、最初に命じられる業務は主担当者の補佐がメインの業務になってきます。

■使用するツール
  • 求人媒体(中途採用向けのもの)・・・新卒採用とは違い求職者のスキル分類が必要です。要は経験者か未経験者かの軸。また履歴書の他に職務経歴書の情報が必要となり、その情報から求職者の絞り込みが必要です。
  • 採用管理システム・・・新卒採用と違い定期的に求職者が湧いてくることはないです。良い人材が転職市場に出てくるまで待つ必要があります。そのため、年単位のシステムを運用するともったいない場合もあり、専用システムを導入する機会は少ないです。多くは求人媒体上の情報を使うことが多いため、内定後、人事システムやタレントマネジメントシステムへのデータ移行がし易いように、タレマネシステムに付随する機能や人事システムに採用管理機能がついたシステムを使うこともあります。
  • エージェント(ヘッドハンティングの業者)・・・成功報酬型が多いです。彼らへの報酬は内定を出す方の年収の30%~40%くらいです。簡単な契約書を交わす必要があります。また、登録型の場合は、求人媒体に紐づくケースが多いですが、年額や月額で利用料金を支払うものあります。
  • オンライン会議システム(Zoom、Teamsなど)・・・Zoomの割合が少し減ってきた印象で、GoogleやTeamsを利用する企業が少しずつ増加しています。
  • 社内のスケジュール共有が可能なポータルサイト等・・・面接官とのスケジュール調整のために利用します。会議室予約なども必須です。
  • メール・電話・・・新卒採用と違いドサッと応募者が来ることはあまりないため、通常のメールでやり取りすることが多いです。採用数が多い企業は採用管理システムで運用するケースが多いですが費用対効果的にもベストです。
■最初に任される仕事

圧倒的に多いのが<面接の手配業務>です。

求人媒体やエージェントから求職者の紹介があった後、書類の内容を確認し、経験やスキルが求人情報と一致していると(求人部署のチェックも入ることが多い)、面接をセットします。求職者のほとんどが在職中であるため面接は終業後に実施することが多く、18時や19時などの遅い時間の開始になります。そのため面接官のスケジュールを早めに入れておくことや緊密に連携を取っていないと、求職者が来場したが面接官がいないみたいなことになります。。(汗)<逆もしかり、予定入れ忘れの悲惨な状況を何度か見たことがあります> そして、面接当日のアテンドもこの手配業務に含まれます。会社によっては最初に採用担当者から会社概要の説明などを行うことがあります。その説明をした後に面接官の案内を行ったり、筆記試験をする場合、その試験監督をすることもあります。(私用があり、諸々の面接当日対応を面接官(部署の人)に丸投げをしているとその採用担当者はきっと嫌われるでしょう。経験談です。)最後に面接終了後、求職者をお見送りした後、面接官との合否の会話が始まります。その日中に○×を決め、合格の場合、次の2次面接の日時を探し始めます。これが複数人同時に実施するとなるとパンクしてきますよね。アテンドする人がいないとか面接の予定確認が漏れるといったことが度々発生している場合は、新卒採用業務でも紹介した日程調整ツールを使ってみてください。少しは改善するかもしれないです。

次に多くあるのが<部署へのヒアリング>です。

新卒採用と違い、業務の理解力が求められます。基本的に未経験採用はしない、即戦力を募集することが中途採用では多いので、どんな業務を経験している人を面接に進めるかを判断する上で、部署へのヒアリングがかなり重要になってきます。そして一度求職者を逃すと次くるのが何ヶ月後になるか予想できないため、職務経歴書の読み込みを部署の方と一緒にかなり深いところまで実施しないといけません。さらに大事になってくるのが、求職者の希望年収です。本人の希望年収と会社が提示できる年収に負の差がある場合、採用できてもミスマッチで早期に退職してしまうケースが非常に多いです。経験値・スキル値と求人部署で提示できる年収を社内資格制度や俸給表を見ながら綿密に打ち合わせする必要があります。

次に任されることが多い業務は<採用戦略(計画)の立案>です。

一般的に戦略というとゴール(目標)へのアプローチ手法を検討することが想像できます。中途採用に限らずですが、採用のゴールはいかに求人部署(求人数)に対して採用を決められるかとなります。そのためのアプローチとなるとやはり採用リード(応募見込者数)を増やす以外ありません。よって、求人広告を費用効率が高く打つ方法や実績の高いエージェントの積極的な登用、リファラル採用制度を導入し社員全員を巻き込むなど、あの手この手で企業にあった求人戦略を打たなければなりません。採用担当者の戦略が下手だと、ただお金を湯水のごとく使い、採用に結びつかないといったこともザラにあります。この戦略立案に正解はありません。やってみなければわからない要素はありますが、傾向と対策、そして過去の分析を行うことで、その時のその会社に一番マッチした手法を考えることがこの業務では求められます。

このように中途採用業務ではある程度の経験が求められます。そして、お金がすごくかかるため、結果にシビアな面があります。故に中途採用業務が嫌になり去っていく人も多くいます。常に採用担当者を募集している会社はおそらく会社全体の離職者数が多く、求人数も多いといった可能性があります。なので、知らず転職するとそれなりにハードな業務体験が味わえると思います。ただ、やりがいは多くある仕事なのではじめて採用業務に挑戦する人はチャレンジしてみてください。

さいごに

いかがだったでしょうか?

はじめて担当する方が「人を採用するだけの業務」だと思っていたら痛い目をみますよね。システムの理解や社内制度の理解はもちろん対人能力や残業などの負荷、細かいスケジュール調整などさまざまな能力を求められる仕事です。

しかし、安心してください。担当する人はみんな同じような経験をしています。そして苦労して手にしたスキルは「ポータブルスキル」です。どんな仕事、どんな業界でも役に立ちます。

何かに悩んだときは初心にかえってみてください。そして相談したいことが出てくればAlpLabへ何でもお問い合わせください。